略奪的なその恋に、本気の愛を見つけた
「萌、俺悪いところがあるなら直すよ。家事だってできることは手伝うし。もう一度やり直そうよ。」

今まで散々言ってきた直してほしいこと、あれもこれも全く直らなかった。
家事もやらないという前提の、手伝うという言葉。
もう、うんざりだ。

正広に抱きしめられたまま、私は彼の言葉をぼんやりと聞いていた。
なにひとつ心に響かない、正広の薄っぺらい気持ち。

「ごめん、もう無理。…戻ることは無理なの。」

言い聞かせるように言う。

私の気持ちはもうあなたから離れてしまった。
もう戻ることはない。
無理なの。

抱きしめられる腕の力がより一層強くなったけど、私は何も応えることなくただそこに立ち尽くした。
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