略奪的なその恋に、本気の愛を見つけた
***

いつものように仕事が終わって、家路を急ぐ。
あと少しで家に着くというところで、後ろから名前を呼ばれた。
振り向くと、正広が立っている。

「えっ…?」

「萌、会いに来たよ。」

驚きのあまり動けなくなってしまう。

なぜここに?
新しい住所は伝えていない。
定期的にメールはきていたけど、すべて無視をしていた。
もう会うこともない、会いたくないと思っていたから。
私の頭の中に、疑問符がいくつも浮かぶ。

「メールも電話も出てくれないからさ、心配したよ。離れてわかったんだ。やっぱり俺は萌が好きだ。もう一度やり直そう。」

笑顔で近付いてくる正広に、私は恐怖を覚えて後ずさった。

「何でここがわかったの?」

「転居届け出しただろ?」

忘れていたわけではないけれど、正広は郵便職員だ。
実家近辺の集配をしているので、当然転居届けも目にするはずだ。
住所を知ることなんて造作ない。

それはわかっていた。

わかっていたけど、職権濫用はしないと信じていたのに。
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