略奪的なその恋に、本気の愛を見つけた
エピローグ
スーツ姿の遼太郎くんがとても眩しく見える。
私の両親の前で背筋を伸ばし、凛とした表情の遼太郎くん。
その横顔が頼もしくて仕方がない。

「はじめまして。萌さんとお付き合いをさせていただいております、江藤遼太郎と申します。萌さんと同じ会社でSEをしております。」

ただ礼儀正しく挨拶をしただけなのに、正広というとぼけた前例があるためか、何倍も何千倍も立派に見えた。
私の知らないところで手土産も準備していたらしく、つつがなく手渡す。

おかしなやつが来たら追い返してやろうと警戒していた私の両親も、遼太郎くんの頼もしく立派な姿に一気に気を許した。

「結婚じゃなくて同棲なのか?」

結婚前に同棲とか、あまりよく思わない父親が疑問を口にする。

「お父さん、結婚だなんて気が早いよ。遼太郎くんも困っちゃうよ。」

慌てて私が口を挟んで遼太郎くんを見るけれど、

「俺はすぐにでも結婚したいよ。」

「ええっ!いや、でもっ!」

予想外な言葉を返されて、今度は私が困る。
そんな、どう答えていいかわからないよ。
私はただただ頬を染めて焦り、それを見た両親は顔を見合わせて笑っていた。

「ちゃんといい人見つけたのねぇ。ねぇ、お父さん。」

母が明るく言ってくれる。
それに父は軽く頷く。

ちゃんと両親に認められることがこんなにも感慨深いものだったなんて、初めて知ったよ。
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