敵役令嬢はラスボスに求婚される。
自分のドジさををここまで呪ったのは初めてだ。
でも、「これは罠ですよー。彼らはサルスーン帝国と手を組んでますよー。」なんて、私が言っても信じられるかわからないし、むしろ何で知ってるのかって疑われそう。

どうしよ。

「こうなったら、もう直訴しかない。北方民族に攻撃をやめてもらおう。」

私は決意した。

いや、もしかしたら死んじゃうかもしれないけど希望がないわけじゃない。
昔お父様がくれた本に、北方民族の事が書かれていた。
彼らは、厳しい自然の中で生きているのでとても規律正しく、我慢強い。そして何より情が厚い。敵であろうと、潔いものには惜しみない賞賛を与えられる心の強い民族だと書いてあった。

もし、敵であっても騎士が鎧も武器も持たずに、しかも女が直訴に来れば話くらいは聞いてくれるかもしれない。あくまで、希望的観測でしかないけど。

今ここで、何もしないよりはましだ。

私は一切の武具を外し、武器も持たずに単身、彼らの元へ向かった。
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