敵役令嬢はラスボスに求婚される。
「それが、本当だったとしてわざわざ敵地に死にに来るとは、随分と勇ましい小娘だ。」

族長の、目が据わっている。周りの部族の人たちも武器を掲げていた。

あまりに非現実的すぎて、まともに恐怖を感じない自分がすごいと思う。

国を守りたいと言う思いが恐怖を凌駕しているのかもしれない。

「こんなところで、殺されるわけには行きません。まだ、生きていたいんで。」

「だったら帰りな、今回だけはその勇気にめんじて許してやろう。攻め込むことに変わりはないがな。」

族長が冷たく言い放つ。

「嫌です。帰りませんし死にませんし攻め込ませません。」

食い下がる、私。

「わがままも大概にしとけよ小娘。人間はな、多くを望めば滅びるぞ。」

とても、100歳とは思えない威圧感を放つ族長。

「滅びるのも嫌です。わがままで貪欲なのは人間の特権です。諦めることは簡単ですが、そこで可能性も終わりです。」

「いい加減にしろ。本当に殺すぞ。」

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