敵役令嬢はラスボスに求婚される。
そう言うと、族長は剣を抜き先端を私の首元へと押し当てた。
鉄の冷たい感覚と、プツンと肉の切れる感覚。ツーっと血液が流れるのを感じたが、私は彼から目をそらさなかった。
ここで引いたらチャンスは二度とやってこないのだから。
意を決して私は口を開いた。
「族長。私は、あなた達に個人的な恨みなんてありません。クレシア国の国民もほとんどなんの恨みもありません。私には皆さんの痛みも苦しみもわかりません。でも、恨みあってるままじゃ私達の孫の代もそのまた孫の代も、ずっとこの関係は変わらないままじゃ無いですか。どこかで、誰かが、グッとこらえて平和への一歩を踏み出さなきゃいけないんです。」
「その為に、わしらに苦しめと。」
「サルスーンに協力することが苦しみから解放されるのとなんですか。………私は幼い頃、騎士団の騎士であった父にこんな話をされました。『北方民族であるサビルズ族は、厳しい環境の中で生き抜いているからこそとても誇り高く、義理堅い、情の熱い民族なんだ。そして、弱いものの味方であろうとする。』と。父はそんなあなた方に憧れて、騎士になり弱いものの味方であろうとしています。私も、その話を聞いてなんて、かっこいい民族なのだと思いました。それなのに、今は敵だと言われ、剣を向けなくてはならない存在であることが、悲しいのです。私達の国にも貴方方と仲良くしたい人はたくさんいるんです。図々しく最低なことを言っているという自覚はあります。ですが、これから起こる最悪の事態を防ぎ、更なる憎しみの連鎖を生まないためには貴方方と手を取り合うほか道は無いのです。どうか、ご協力ください。」
鉄の冷たい感覚と、プツンと肉の切れる感覚。ツーっと血液が流れるのを感じたが、私は彼から目をそらさなかった。
ここで引いたらチャンスは二度とやってこないのだから。
意を決して私は口を開いた。
「族長。私は、あなた達に個人的な恨みなんてありません。クレシア国の国民もほとんどなんの恨みもありません。私には皆さんの痛みも苦しみもわかりません。でも、恨みあってるままじゃ私達の孫の代もそのまた孫の代も、ずっとこの関係は変わらないままじゃ無いですか。どこかで、誰かが、グッとこらえて平和への一歩を踏み出さなきゃいけないんです。」
「その為に、わしらに苦しめと。」
「サルスーンに協力することが苦しみから解放されるのとなんですか。………私は幼い頃、騎士団の騎士であった父にこんな話をされました。『北方民族であるサビルズ族は、厳しい環境の中で生き抜いているからこそとても誇り高く、義理堅い、情の熱い民族なんだ。そして、弱いものの味方であろうとする。』と。父はそんなあなた方に憧れて、騎士になり弱いものの味方であろうとしています。私も、その話を聞いてなんて、かっこいい民族なのだと思いました。それなのに、今は敵だと言われ、剣を向けなくてはならない存在であることが、悲しいのです。私達の国にも貴方方と仲良くしたい人はたくさんいるんです。図々しく最低なことを言っているという自覚はあります。ですが、これから起こる最悪の事態を防ぎ、更なる憎しみの連鎖を生まないためには貴方方と手を取り合うほか道は無いのです。どうか、ご協力ください。」