敵役令嬢はラスボスに求婚される。
その時だった。薄暗い牢に松明の明かりがゆらめいた。

「小娘、生きておるか。」

テシ族長だった。

「生きてますよ。死ぬ気もありません。」

強がっているのは明白だった。

「フッ、強欲な娘じゃ。この期に及んで生きれるとでも?」

何しに来たんだよ、この人。

「嫌味でも言いに来たんですか。」

私の問に族長は、ひょうたんを持ち上げた。

「酒じゃ」

「酒?……最後の晩餐ならもっと豪華な食事でおねがいします。酒は飲めません。」

「死ぬ間際まで、この娘は強情らしいな。」

そう言って族長は、牢の前に腰を下ろして酒を飲み始めた。

「今、族のみんなと話してきた。」

突如前触れもなくそんな話をし始めた。

「はぁ、なんの話ですか。」

< 26 / 40 >

この作品をシェア

pagetop