恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「私の方でもきちんとお話をさせてもらうけど、おばあちゃんが目覚めたら、梓さんからも話してもらえないかな?」
「わかりました」


とりあえず命の危険にさらされているわけではないと知り、梓はふぅと大きく息を吐き出した。


「それにしても縁とは不思議なものだね」


久城はしみじみと言いながら、梓と一樹を見た。


「私の亡くなった父、まぁ一樹にとったら祖父だね。その父の初恋の相手は多香子さんなんだよ」
「えっ、初恋?」


久城の思わぬ暴露話に、梓と一樹は声を揃えた。


「昔の話だからね、お互いの気持ちの通りにはいかなくて、別々の相手と結婚することになったらしいが」


一樹が久城の息子というだけでも驚いたのに、多香子と一樹の祖父とのつながりまで知り、梓はなんともいえない気持ちになった。


「不思議な力がふたりを引き合わせたのかもしれないね」

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