恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
大丈夫、心配いらないと言われていても、実際に意識を失ったままの多香子を前にすると、もしかしたら……と、不安な気持ちで押しつぶされそうになる。
陽子は梓と反対側のベッドサイドに椅子を引っ張ってきて座った。両サイドから多香子の手を握る。
こうして陽子とふたりでベッドに横たわる多香子が目を覚ますのを待ちわびるのは、一年前の手術の後以来だ。あのときも、ちゃんと目覚めるかどうか不安でいっぱいだった。
「大丈夫だよね?」
そう聞かずにはいられない。
「大丈夫よ」
陽子はそう返してくれるが、どうしたって平静を保てなくなる。不安がどんどん大きくなっていった。
それからさらに一時間が過ぎた頃だろうか。握っていた多香子の手がピクリと動いた。
「あっ、今、手がピクッていったよ」
「本当? そろそろかしら」