恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
陽子とふたりで多香子の顔をじっと見つめていると、今度は瞼がかすかに動く。
「おばあちゃん」
梓の声に反応したか、ゆっくりと目が開かれていく。
「おばあちゃん!」
もっと大きい声で呼びかけると、多香子はようやくしっかりと目を開けた。
「梓に陽子さん? ふたりともいったいどうしたの」
多香子のその第一声を聞き、陽子と梓は顔を見合わせて笑った。
「どうしたのじゃないでしょう? 意識を失ったって病院から連絡をもらって、びっくりして駆けつけたんだから」
「そうよ、お母さん」
「やだねぇ。ちょっと眠っていただけだよ。そんなに簡単にあの世になんか行きませんよ。おじいさんが迎えに来たって、まだ行かないって駄々をこねて追い返すんだから」
そう言って多香子が微笑む。