恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「……違いますか」
「実はこう見えて、医師を目指して医学部に通っていたんだ」
「えっ、そうなんですか?」


父親が院長として病院を経営していれば、息子が医師を志すのは当然かもしれない。そんな一樹が、どうしてデザイン会社を始めたのだろう。


「小さい頃から絵を描いたり、なにか物を作ったりすることが大好きだったんだ。でも周囲からは医者になれと期待されるだろう?」
「そうですよね。お父様がお医者様なんですもの」


きっと次期院長ともてはやされただろう。その期待値もかなり大きかったはず。


「だからそっちの道は諦めて医学部に入学したんだけどね。学べば学ぶほど、これじゃないって気持ちが強くなって。二年生になって数ヶ月後に退学して、美術系の専門学校に入りなおしたんだ」
「お父様やお母様は反対されなかったんですか?」


普通の家庭だったら、猛烈な反対にあって、それこそ勘当騒ぎにもなるのではないか。


「両親とも俺が言い出したら聞かないことはよくわかっていたから」

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