恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

久しぶりに見た。小さい頃には何度かやった記憶があるが、一度も成功した試しはない。手先が器用な方ではないのだろう。


「脳が疲れたときに、気分転換になるんだよね。ほかにもあるぞ」


一樹はコーヒーをテーブルに置くと、テレビボードの引き出しに入っていた箱を取り出して戻った。
両手に乗るくらいの大きさの箱の中には、いろんな種類の知恵の輪がたくさん詰まっている。


「わぁ、すごいですね」


いくつか手に取ってみると、三角形や四角形などの単純な形をしたものから、複雑に入り組んだ形状のものもあり、それを見ているだけで楽しい。


「やってみてもいいですか?」
「もちろん。好きなのをどうぞ」


一樹に箱ごと手渡され、梓はそれを膝の上に置いて物色し始めた。

(あ、これなんてかわいい)

梓が見つけたのは、鎖で結ばれた金と銀のハートの知恵の輪だった。

< 130 / 301 >

この作品をシェア

pagetop