恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「一樹さんが私をからかったら、ペナルティを付けますよ?」
「いいよ。そのペナルティはキスだろう?」
一樹に言われ、梓は自分の失言を思い知る。
「や、やっぱりやめておきます。ペナルティはなしでいいです。大丈夫です」
「そこまで嫌がらなくてもいいだろ?」
「嫌というか……」
自分の気持ちをどう説明したらいいのだろう。でも、絶対にこの想いだけは一樹に言えない。
「嫌じゃないなら、そのペナルティも科そう。思えば、梓にだけ科すってのもおかしな話だしね」
妙なことになった。これではますますドツボにはまっていく。
「あのですね、一樹さん」
「まぁ、それはそうと、食事に行こうか」
「え、あ、はい」
「その知恵の輪が気に入ったのなら、梓にあげるよ」
一樹のウインクが飛んでくる。不意打ちだったため、避けるに避けられない。
放たれた矢に胸をひと突きされた感覚だった。