恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「あげるといえば、大事なことを忘れるところだった」


慌てているようなのに優雅な仕草。一樹は立ち上がって別の部屋へ入ったかと思えば、すぐに舞い戻ってきた。
なぜか、花束を抱えている。


「あの、それは……?」
「実はさ、梓のおばあちゃんのところに行くために家を出て、花でも持っていこうかと花屋に立ち寄ったんだよ。でも花屋で、最近の病院では生花は禁止されてるって言われてさ」


雑菌を病院に持ち込まないために禁止している病院は多い。久城総合病院もたしかそうだ。


「で、そのまま手ぶらで帰るわけにはいかないから、梓に花束を作ってもらった。車に乗せたままだと昼間じゃしおれちゃうかと思って、いったんここに持ち帰っておいたんだ」
「私に、ですか?」


思わぬプレゼントをされ、梓の心が大きく揺さぶられる。

どうリアクションしたらいいのかわからず固まっていると、一樹から「もしかして、花は嫌いとか?」と言われた。
梓は即座に首を横に振る。

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