恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
願いが叶った夜
そろって休憩室へ向かう途中で、絵梨が梓の足もとをまじまじと見たのは、翌週の木曜日のこと。
「なんか背が高いと思ったら、梓さん、ハイヒール履いていたんですね」
それは昨日、仕事帰りに寄った店で自分のお金で買ったもの。一樹がプレゼントしてくれたような高級なものではないけれど、初めて自分で買ったハイヒールだ。
せっかくだからと、七センチの高さのものにした。
普段、梓が着ている洋服に合わせやすい無難なブラックを選び、デザインも定番。でも、ピンヒールのため、美しい後ろ姿になると店員にのせられて買ったものだった。
「こうして見ると、梓さんってスタイルいいですよね。私なんて小さいから、いくら頑張ったって、百六十センチにもならないんですよ?」
「私は小柄な絵梨ちゃんがうらやましいけどな」
「えー? そうですかぁ?」
疑問形で返しながらも、まんざらでもなさそうに絵梨は照れた。
「でも、いったいどんな心境の変化があったんですか? ハイヒールは絶対に履かないって、前に言ってましたよね」