恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
歳をとるにつれ、先行きが心配になるのも当然だろう。梓が結婚する、しないに関係なく、余生をひとりで生きていくのを想像したら寂しくて当たり前だ。
今までひとりでがんばってきたのだから、陽子には幸せになる権利がある。
「大丈夫だよ、お母さん。私、わかってるから」
「梓、ありがとう……」
陽子と手を取り合って絆を確かめていると、梓は横顔にふと視線を感じた。
うっかり相手の男性の存在を忘れるところであった。
姿勢を正して座り直し、梓は陽子と男性を交互に見る。
「それでお相手の方は……?」
陽子はニコニコ顔で男性を見て、手で指し示しながら紹介を始めた。
「こちらの方はね、遠藤夏生(えんどう なつお)さんとおっしゃってね、不動産会社をやられている方なの」
「社長さんってこと?」
陽子に尋ねると、代わりに男性が口を開く。