恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「社長は父がやっておりまして、僕は専務です。ゆくゆくは継ぎますので、次期社長になりますね」
「そうなんですね……」
梓は小さく何度も頷いた。
なんと年下のうえ、次期社長の肩書きをもつ男性を捕まえてくるとは。玉の輿ではないか。
梓は思わず、〝すごいじゃない、お母さん〟と言いそうになったが、ぐっと言葉を飲み込んだ。
もちろんお金だけがすべてではない。でも、今まで苦労してきたことを考えると、陽子には少しでも余裕のある暮らしをしてほしい。
「どうぞよろしくお願いします」
梓は両手を膝の上に揃え、丁寧に頭を下げた。
「梓さんが快く受けてくださるみたいなので、僕もうれしいです」
「私が受けるもなにも、母が決めたことですので。母が遠藤さんとこの後の人生を一緒に歩んでいきたいと思うなら、私はなにも――」
「ちょっと待って、梓」
梓が言い終わらないうちに陽子が遮る。
「どうかしたの?」
「あなた、なにか勘違いしてない?」