恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
そう言われても、いまだに信じられない。
絵梨と話した先入観が邪魔したのだろう。
「だけど、突然どうして?」
今まで一度だって、こうして男性を紹介されたことはなかったのに。
多香子には常々『梓の花嫁姿が見たい』と言われてきたが、陽子には『結婚はしてもしなくてもいいのよ』と言われてきた。
「実はね」
「お母様、それは僕の方からお話しさせてください」
遠藤が陽子を制する。陽子は「そうね。それがいいわね」とやわらかく笑った。
「梓さんは、僕を覚えていませんか?」
「……どこかでお会いしているんですか?」
梓には身に覚えがない。
「クレアストの創立記念パーティーがありましたよね。その会場で」
「遠藤さんもいらしてたんですか?」
ということは、クレアストの取引先だろうか。