恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

◇◇◇

温かく逞しい腕に抱かれながら、梓は激しい嵐の後に訪れた静かな時間に身をゆだねていた。
心が通じ合い、身体が結ばれるのが、こんなにも人を幸せな気持ちにさせるのだと梓は初めて知った。

一樹が大事なものに触れるように優しく慎重に扱ってくれたおかげで、初めての経験であっても梓はなにひとつ怖いことはなかった。それどころか、自分の身体の反応に驚いたくらいだ。

乱れたシーツの上で、一樹が梓を抱き寄せる。まるで祈りでも込めるかのように、梓の額に長いキスを落とした。


「一樹さんが私を好きだなんて、まだ夢みたいです」


実はこれが夢で、目が覚めたら現実はまったく違うと言われても不思議ではない。
自分が誰かと恋に落ちることも、その相手が一樹のような素敵な男性だということも、ふたりの間に存在するすべてが、いまだに非現実的だ。


「夢じゃない。紛れもない現実だ」


言葉こそ違うが、好きだと言われたようで胸が熱くなる。

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