恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

ワンレンボブのヘアスタイルは、一本の乱れも許さず、まつ毛のカールも毎度同じ角度。ついでに言えば、質問するときに傾げる首の傾斜まで同じときている。

友里恵を差し置いて、ほかに几帳面な人間を一樹は知らない。

そして、友里恵の指摘通り、一樹の機嫌はすこぶるいい。
なにしろ一樹は、梓のすべてを手に入れられた。上機嫌にならないわけがないだろう。


「昨夜、佐久間さんとご一緒だったのではないですか?」
「さすが三島」


一樹が思わず口笛を鳴らすと、友里恵に「社長」と強くたしなめられた。


「今朝早くに『菅原(すがわら)建設』の社長様より、昨夜のお礼のお電話が入りました」


菅原建設は、現在のクレアストで最も大がかりなプロジェクトである、結婚式場を施工した会社だ。建物の建築は滞りなく進んでおり、中締めの意味合いをもった食事会の席を設けたのだ。


「たったそれだけで、よく梓と一緒だったとわかったものだな」

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