恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「いえ、それだけの情報ではございません。その後、次の店に行くご予定を久城社長が急きょお断りになったと、菅原社長様がおっしゃっておりまして、それでもしやと思った次第です」


一樹の機嫌がいいことと、予定をキャンセルしたことを梓に結びつけるのだから、大した推理力だ。

梓をその場しのぎの婚約者ではないのかと疑惑の目を向けていた友里恵だが、それも最初のうちだけ。尾行をして監視した結果、ふたりの演技っぷりがよかったのかすっかり信じたようだ。

本物の恋人になった今思えば、友里恵のその監視がふたりを近づけるきっかけになったといってもいいだろう。

はじめは一樹も、見合いパーティーさえ逃げられればいいと思っていた。たまたまあの場に居合わせた梓に、特別な感情があるわけではなかった。
社内で見かけても、顔と名前が一致しないくらいに低い認知度。それがどういうわけか、梓を知るにつれて、強烈に惹かれる自分がいた。

思えば、これまでひとりの女性と真剣に向き合った経験はなかったかもしれない。
フィーリングが合えば、気軽に付き合った。恋愛感情よりも、一緒にいて楽しければそれでよかった。

女性遍歴が激しいと言われた過去もある。それこそ次から次へととっかえひっかえだった。

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