恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

『久城社長ですか』
「えっ……?」


遠藤が思いもしない名前を口にして、梓が言葉に詰まる。ドキッとせずにはいられない。

(どうしてそれを……?)


『この前の夜、梓さんをホテルのエントランスで見送ろうと、急いで追いかけたんです。そうしたら、梓さんが久城社長とエレベーターの前に一緒にいるじゃないですか』


なんと、あの場面を遠藤は見ていたという。


『まぁ、そこまでならなにか仕事絡みの用事なのかと思ったのですが、降りていくエレベーターのインジケーターを見ていたら、すぐひとつ下の階で止まったんです。嫌な予感がして僕も隣のエレベーターで急いで降りたら、ふたりは部屋の中に』


そこまで見られていたとは思いもしなかった。
でも、それなら話は早いのではないか。一樹との関係を知っているのは会社関係では、友里恵だけ。ほかの人の耳に入れるのはどうかとも思ったが、現場を押さえられている以上、隠し立てする意味がない。


「本当にごめんなさい」

< 209 / 301 >

この作品をシェア

pagetop