恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
小さな出会いが引き寄せた罠


毎日がこんなにも楽しいと感じるのは、梓が大人になってから初めてかもしれない。

無邪気な子供の頃、純粋に楽しんでいた日々は、背がぐんぐんと伸びていくにつれコンプレックスとなって梓を委縮させていった。
多感な時期にした片想いの相手は梓よりも背が低く、〝大女〟と陰で言われていると知って傷ついたこともあった。

自分には恋は一生できないのだろう。
そう諦めていた梓に最高に素敵な恋人ができたのだから、毎日がハッピーで当然だ。

多香子の手術も無事成功し、病院でのリハビリを終えて退院の時を迎え、今夜はそのお祝いを自宅で開いている。

一樹も招待したかったが、式場の現場が忙しいため来られなかった。

多香子たっての希望で、メニューは手巻き寿司。テーブルにはトロやホタテ、イカにタコ、奮発して買ったイクラとウニも並んでいる。
デザートには多香子の好きなイチゴ大福も用意してある。

主治医の久城からは食べるもの、特に塩分にはくれぐれも注意するように言われているが、甘いものの摂りすぎも控えるようにと退院時に言われていた。
そのため、一度にふたつくらいならぺろりといく多香子だが、今夜はひとつで我慢してもらうしかない。

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