恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

熱いお茶で退院を祝って乾杯した後は、思い思いに寿司ネタを選んでいく。


「やっぱりおばあちゃんがいるのといないのとでは、家の空気が違うよね」
「そうかい?」
「うん。仕事から帰ってきたときに家が明るいとホッとするし」


陽子は店のため夜はほとんどおらず、この二ヶ月は梓がひとりきりだったため、多香子がいるだけで全然違う。


「ね? お母さん」


陽子に同意を求めたが、反応がない。


「……お母さん? どうかしたの?」


陽子は手にしたのりの上に、酢飯をどんどん追加していた。おかげで山盛りだ。多すぎて、とても巻ける量ではない。


「え? あ、ううん、なに?」
「なに?って、話聞いてなかったの?」
「……ん、あぁ食事療法よね? それならお母さんに任せて。なにしろ――」
「やだな、違うよ」

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