恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
まったく見当違いのことを話し始めた陽子を梓が止める。
まったく聞いていなかったようだ。
「おばあちゃんが家にいるのはうれしいねって話」
「あぁうん、そうよね。本当にそう。お母さんもおばあちゃんが家にいてくれると、梓をひとりにしても安心だし」
さすがに小学生の子供ではないけれど。
取り繕ったように続ける陽子だが、やはりどこか様子が変だ。いつも明るい陽子の顔が浮かない様子なのが、なによりの証拠。
「陽子さん、どうかしたの?」
多香子も梓と同じように感じとったようだ。
「いえいえ、なにもないですよ」
そう言って笑った顔はいつもと変わらないが、陽子はふとしたときに考え込むようする。梓が見つめていることに気づくと、すぐに笑みを浮かべるが、なんとなくごまかされている気がしてならなかった。
店の経営状況が思わしくないのか。それともなにか別の心配事か。