恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
◇◇◇
それから一週間後のことだった。
梓がお風呂から出て階段を上がっている途中で、スマートフォンの着信音が聞こえてきた。
一樹かもしれないと慌てて部屋に戻り、デスクに置いてあったそれを手に取ると、見知らぬナンバーからの電話だった。
「誰だろう?」
不審に思いながら電話に出ると、『もしもし、梓さんですか?』と、男性の声が聞こえてくる。
どこかで聞いたことのあるような声ではあったが、梓には誰だかわからない。
名指しているのだから、相手は梓だとわかってかけてきているのだろう。
「はい、そうですが」
『僕が誰だかわからないみたいですね』
クスッと笑う気配が電話越しに伝わってくる。
「……はい、すみません。どちらさまでしょうか?」
『僕ですよ。遠藤夏生です』
「えっ、あぁ、遠藤さん。ごめんなさい。失礼しました」
遠藤とはあれきりだと思っていたため、連絡先を登録せずにいたのだ。