恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

梓の問いかけに、きちんと返事は返ってきた。ただその声は、最初のときよりも幾分か低い。
梓が会えないと答えたため、気を悪くしたか。

(でも、電話で一樹さんとのことを話したときには、あっさりと納得してくれたよね。それなのにどうして今さら?)

機嫌を損ねたように感じたのは、梓の思い違いかもしれない。誠実で優しそうに見えた遠藤が、そんな態度をとるようには考えられないから。


『ですが、梓さんは僕に会った方がいいと思いますよ。いや、会うしかないと言った方がいいのかな』
「……はい?」


それまで優しかった口調が、心なしか上から目線のようになる。どこか脅迫めいた言い方に聞こえた。

(なんだか遠藤さん、様子がおかしくない?)

遠藤の変化に梓が戸惑う。


『たぶん、会って僕の話を聞かないと、梓さんは後悔しますよ』
「後悔、ですか?」


どうしてそうなるのか、梓には見当もつかない。
遠藤の言わんとしていることがさっぱりわからず、梓の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだ。

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