恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

◇◇◇

昼時を迎えた賑やかな休憩室の隅のテーブルで、梓は弁当箱を前にぼんやりとしていた。
箸を持ってはいるが、弁当は手つかず。考えるのは、昨夜の遠藤からの電話だ。

もう会わないのは遠藤もいったんは承知したはずなのに、いきなり『会わなければ後悔する』などと言う理由がつかめない。
しかも家族をダシに使われ、どうしたらいいものかと梓は昨夜から悩んでいた。

一樹に相談しようかとも思ったが、式場の完成まであともうひと息。忙しい一樹に負担をかけたくはないと話せずにいる。


「あーずささん」


リズムをつけて声をかけてきた絵梨が、空いている前の席に座る。


「見てくださいよ、梓さん。私も今日は梓さんを見習って、身体の中から綺麗になりそうなおかずを詰めてみたんですよ」


絵梨が弁当のふたを「じゃじゃーん」と言いながら開ける。
するとそこには、絵梨のいう通りにハスのきんぴらやひじきの煮物、ささみと豆苗のサラダが美しく詰められていた。

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