恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

絵梨は目に力を込めてそう言い、梓に強く訴えた。
どうやら梓と絵梨は、互いに持っていないものに憧れがあるらしい。


「ところで、梓さん、彼氏とかできましたか?」
「なっ、なにを突然?」


口になにも入れていなくてよかった。もしも食べ物が入っていたら噴き出したかもしれない。梓が大きく動揺する。


「綺麗になっていくのもそうですけど、最近ちょっと感じが違うなーって。キラキラしてる感じがします。ハイヒールをいきなり履いてみたり」
「そ、そんなことはないよ。彼氏なんて、ほんと全然……」


絵梨なら誰かに話す恐れはないだろう。でも、さすがに相手が社長だけに、そう簡単に打ち明けるわけにはいかない。


「そうですか? じゃあ、私の見当違いなのかなぁ」
「そうよ、そうそう」


なんとかそうごまかし、梓はそこでやっと自分の弁当に手をつけた。

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