恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
遠藤に促され、梓は結局のところ店内に入ることになった。
テーブルや椅子など、木目調で統一された店内はとても温かみがある。八割程度のテーブルが埋まっている中、梓たちは手前の窓際へ案内された。
「せっかくですから、なにか食べられるものも頼みましょうか。ここはドリアなんかもおいしいらしいですよ」
「いいえ、せっかくですがコーヒーにします」
一樹に話していない後ろめたさもあり、遠藤と食事をした事実を作りたくなかった。
遠藤が自嘲気味に笑う。
「では、僕もそうしましょう。ひとりだけ食べるのは味気ないですからね」
遠藤は通りがかったスタッフにホットコーヒーをふたつ注文し、テーブルの上に組んだ手を置いた。
じっと見つめられ、なんとなく居心地が悪い。梓はその目を見ていられず、自分の手もとに目線を落としながら口を開いた。
「それで、お話というのは……?」
「まぁ、そう焦らずにいきましょう。時間はたっぷりとあります」