恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

◇◇◇

その日の夜、梓は一樹と食事をしてから彼のマンションにやって来た。

一樹と一緒にいても、どうしたって考えるのは陽子のこと。忍び草の今後だった。
コーヒーを淹れてくれるという一樹に甘えてソファで待っているときも、自分がどこにいるのか忘れるくらいに考え込んでいた。


「あーずさ」


そう呼ばれて初めて、一樹が隣にいることを思い出す。


「今、なに考えてた?」
「……あ、いえ、なにも。ちょっとぼんやりしていただけです」


慌てて笑顔を取り繕って誤魔化した。一樹に余計な心配をかけたくない。


「そうか? ずいぶんと気難しい顔してたぞ? ほら、こっちおいで」


一樹に腰を引き寄せられ、左半身がぴったりと密着する。そのまま肩を抱き寄せられるようにしてキスをされた。

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