恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
◇◇◇
昼休みのうちにメッセージで一樹と夜会う約束を取りつけ、その時を待つ。
待ち合わせたのは、一樹と想いを通わせたル・シェルブルの最上階にあるラウンジ。一樹のマンションではキスに惑わされ、梓の思うように話を進められない可能性があるからだった。
先に着いた梓はオレンジフィズを注文。意にそぐわない話をシラフでできる気がしなかった。
一樹が現れたのは、梓がそれをちょうど飲み干した頃だった。
「待たせたね。珍しいな、飲んでたのか」
空になったカクテルグラスを見て、一樹が目を丸くする。
「はい。一杯だけですが」
笑顔を浮かべたい気持ちをぐっとこらえ、真顔で返す。
梓のそんな態度に気づいたのか、一樹が顔を覗き込んできた。
「なにか機嫌悪い? 待ちくたびれたか?」
「いえ。そんなことはありません」
目を逸らし、空のグラスをぎゅっと握りしめる。