恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
一樹の言葉を遮り、さっきよりも強い口調で言った。
胸をかきむしるような痛みに襲われる。
苦しくて、痛い。
「なんのジョークだ。エイプリルフールじゃないぞ」
一樹が冗談めかして一笑する。
「ジョークじゃないです。……本気です」
声を振り絞る。おかげで唇が震えた。
「理由は?」
「ほ、ほかに好きな人が」
「嘘をつくな」
「嘘じゃないんです。本当なんです」
思わず声が大きくなり、ラウンジにいるお客の視線を浴びた気がした。
唇だけじゃなく、呼吸まで震えていた。
一樹を傷つけたくはなかった。そんな嘘で一樹を苦しめたくもなかった。
でも、そんな理由でもなければ一樹を納得させられない。
「……どこのどいつ」
「それは……」