恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
この二ヶ月、ふたりの前ではなんとか笑顔を見せていたが、ふとしたときに一樹のことを考えると暗い顔になる。ふたりもそれに感づいていたのかもしれない。
控え室のドアがノックと同時に開く。鏡に映った遠藤を見て、梓の気持ちはさらに沈んだ。
「素敵ですね、梓さん」
梓に近づき、椅子の周りをくるりと歩く。手を取り、梓を立たせた。
梓はされるがまま。自分が操り人形にでもなった気分だった。
きっと梓は、一生一樹を愛し続けるのだろう。
べつの人のそばにいながら、一樹を想い続けて生きていく。
遠藤は梓の両手を握り、じっと見つめた。
梓はその目を見ずに俯く。それを恥ずかしがっているととったか、遠藤はクスッと鼻を鳴らした。
「顔をあげてごらん、梓」
いきなり呼び捨てで呼ばれ、背筋に嫌なものが走る。