恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

秘書は「申し訳ありません。ですが急ぎで」となおも食い下がった。


「遠藤さん、みよしの商店街のビル建築の話って、なくなったんですよね?」


どうしても気になり、梓が問いただす。


「え? あ、うん、まぁそうですね。なくなったっていうか、もともとストップするとは言いましたが、中止にするとは言っていませんよ」
「そんな……」


遠藤は開き直った。あまりにもひどい言い草に、梓は言葉が続かない。
梓は商店街を守るために……忍び草を手放さなくていいように、遠藤の言いなりになったというのに。

(それを反故にするなんて……。私はなんのために一樹さんと別れたの?)

行き場のない悲しみと苛立ちが、心の中で渦巻く。


「今日の婚約披露パーティーさえ済めば、梓さんは僕から逃げられませんからね」


遠藤は最初から梓を騙すつもりだったのだろう。

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