恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
梓を手に入れるためにみよしの商店街に目をつけ、開発の名のもとに揺さぶりをかけ、自分のものになった途端、計画を再始動させる。
はなからそういう魂胆だったのだ。
梓は、それにまんまとのせられた。
大切な、大好きな一樹のもとを離れるという大きな代償を払ってまで。
梓が足もとから崩れそうになったそのとき、控え室のドアが大きく放たれた。
「それならまだ間に合うな」
聞き覚えのある声が、梓の胸を打ち抜く。その声につられるようにして梓が顔を上げると、そこに信じられない人物が立っていた。
一樹だったのだ。
走ってきたのか肩を上下させ、今まで見せたこともないほどの険しい顔をしている。
梓はなにが起こったのかわからず、その場で金縛りにあったかのように棒立ち。それは遠藤も同じだったようで、ぽかんと口を開けた情けない表情で一樹を見た。
「遠藤、梓は返してもらう」
「……どうしてそんなことができるんでしょうか? 梓さんは自分の意思で僕を選んだんですよ? ねぇ、梓さん?」