恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
遠藤にそう聞かれたが、梓は首を縦には振れない。みよしの商店街の開発が再始動したと聞く以前だったら、遠藤の質問に頷いていただろう。
でも、今は違う。
梓を騙し、自分のほしいものをなりふり構わず手に入れようとする遠藤に従うつもりはない。
梓が首をふるふると横に振っているのを見た遠藤は、それでも余裕の笑みを浮かべていた。
「梓さんが、今ここでもう一度僕との結婚を誓うのであれば、今度こそ本当に商業ビル建築の話は白紙にしましょう。ストップではありません。白紙にしますよ」
遠藤が不敵に言い放つ。
遠藤は今たしかに〝白紙〟だと言った。一時中断の〝ストップ〟ではない。
(……今度こそ、本当に忍び草を守れるの? そうだとしたら……)
梓が心を動かされそうになったとき。
「梓、コイツの言うことに従う必要はない」
一樹が強く言い放つ。
「コイツとは心外ですね。負け犬の遠吠えというやつですか? 残念ながら、ここにあなたの出る幕はありませんよ」