恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「それは遠藤専務、あなたの方だ」


一樹は遠藤を鋭く指差した後、ドアの方を向いて誰かを招き入れる仕草をする。
そこから入ってきたのは、がっしりとした体格の男性だった。


「……栗田さん? あなたがどうしてここへ?」


遠藤は眉をひそめながら首を傾げる。
栗田と呼ばれた男は、一樹より一歩前に出た。


「遠藤専務、今回のお話はなかったことにしていただけませんか?」
「なにを突然。商店街というものはこれから衰退するいっぽうなんですよ? 大きな商業ビルを建てて活性化を図らなければ、十年後には誰も近寄らなくなる」
「ですから、ここにいらっしゃるクレアストの久城社長と、その活性化を図っていこうと決めたんです」
「は? なにを今さら……。いったいなにができるつもりでいるんですか? だいたい商業ビルに賛成している人たちはどうするつもりですか」


遠藤が焦り始めているのは、手にとるようにわかった。唇がわなないている。
いつも冷静な遠藤には珍しい様子だ。

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