恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「それでしたら、こうして彼らの了解も得ておりますので」
栗田は手にしていた用紙を遠藤に差し出した。
梓から見えたのは、名前と印が押された署名の一覧のようなものだった。
「……そんな馬鹿な」
「開発に賛成していた者たちも、もとを正せばあそこで商売を続けていきたかったんですよ。ただ永続させていく手段と自信がなかっただけで。ですが今回、空間デザインのプロフェッショナルである久城社長から素晴らしいご提案をいただいて、みんなでやってやろうじゃないかと立ち上がったわけなんです」
遠藤の顔色がみるみるうちに青ざめていく。無理やり呼吸するかのように肩を上下させ、その目はゆらゆらと泳いでいた。
目の前に起きていることが信じられないのは、梓も同じ。一樹がそんなふうに立ち回っているなど知る由もなかったのだから。
「そういうわけだ。遠藤専務、観念しろ」
一樹が言うのと同時だろうか。遠藤はその場に膝から崩れ落ち、それを秘書が必死に支えた。
悪夢の終わりは突然。梓は全身から力が抜けていく気がした。