恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「梓、おいで」


両手を広げて優しく微笑む一樹の胸に、思いきって飛び込む。


「一樹さん……！」


懐かしいぬくもりと香りだった。込み上げてくる想いに胸が熱くなる。


「遅くなってごめん」


遅いもなにもない。梓を真っ暗闇の中から救い出してくれたのが、一樹だという喜びに身体中が震えた。


一樹に肩を抱かれるようにして歩き、駐車場に停められていた車に乗り込んだ。

もう離れたくない。そんな想いに突き動かされるように、どちらからともなく唇を重ねた。
ゆっくりとした優しいキスが、離れていた時間を埋めていく。

互いに腕を伸ばし合い、身体を引き寄せる。運転席と助手席の間が離れているのがもどかしい。
もう二度と一樹と触れ合うことはないと思っていた。心を通い合わせるのもそう。

愛しくて、切なくて、胸の奥がきゅうっと縮まる。