恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
一樹が遠藤の策略に気づかなければ、梓はここにはいなかった。
今日あの場に一樹が来なければ、梓は遠藤と人生を歩んでいたかもしれない。
大好きな人と一緒にいられるのは奇跡的なこと。そう思わされた。
唇をそっと離した一樹が、梓をしっとりとした眼差しで見つめる。
「どうして俺に相談してくれなかったんだ」
「……一樹さんに迷惑はかけたくなかったんです」
「俺を誰だと思ってる。見くびってもらったら困るな」
見くびっていたわけでは決してない。頼りがいのある男は一樹をおいてほかにいないのは、梓もよく知っている。
でも、家族の問題は自分でなんとかしなければならないと強く思い、相談できなかった。
「ごめんなさい。ひどいことも言いました」
「あれは、かなりパンチが効いていたぞ」
一樹が間近で微笑む。
そうして笑ってくれるのも、今ここに梓がいるからだろう。
「本当にごめんなさい。あんなこと本当は思っていなかったんです」