恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
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プレゼン用の企画書の作成、デジタルパース、各種イベントデザインのスケジュール調整。次から次へと仕事をこなしていく梓を見て、絵梨が向かいのデスクから首を伸ばす。
「梓さん、すごく張り切ってません? 最近、なにかいいことでもありましたか?」
「え? どうして?」
梓は、パソコンの画面から目をずらして絵梨を見た。
「ここ一週間くらいそうですけど、これまでにも増して精力的に仕事してるんですもん。なんだか顔もキラキラしてるっていうか」
たしかにいいことはあった。
一樹と別れていた辛い二ヶ月をひと息で吹き飛ばすほどのいいことが。
絵梨に言われてドキッとしたし、その通りでもあるが、一樹とのことを話すわけにはいかない。いわばトップシークレットだ。
なにしろ一樹はクレアストの社長。その恋人が社内にいたのでは、周りも一樹も仕事をしづらくなるだろう。
「なにもないよ」