恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「今回の一件では、本当にお世話になりました」
ドアを閉めるなり頭を下げる。
「いいえ。私は社長の指示に従っただけですから。社長が仕事をしやすくするのは秘書の勤めです」
友里恵は生真面目な表情で顎を引いたと思えば、口角をニッと吊り上げて続ける。
「そして、なによりも社長の結婚ですからね。その後、どうですか? そろそろいいのでは?」
「いえ、そうおっしゃられましても……」
こればかりは梓ではどうにもできない。女性からプロポーズもありかもしれないが、梓にはそこまでの勇気はない。
一樹がそこまでは考えていなかったら、妙なプレッシャーを与えてしまう。それで仕事に支障が出たら友里恵も本末転倒だろう。
「おふたりが早く片づいてくださらないと、私も困るわ」
「そう、なんですか?」
いったいなにがどう困るのだろうか。
梓が首を傾げていると、友里恵は驚くべきことを口走った。