恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「実はこの度、婚活が実を結び、この私にも結婚の話があがっているのです」
「えっ……? 三島さん、ご結婚されていなかったんですか? 若い頃にご結婚されて、すでに社会人の息子さんがいるとばかり」
「まぁ、どこのどなたがそのような話を?」


いつも冷静な友里恵の目が大きく見開かれる。


「どなただったかは私も定かではないのですが……。てっきりそう思っていました」


そういえば噂の出所は判然としない。いつの頃からか、そうなっていたのだ。
おそらく友里恵の年齢から勝手にそう思い込んでいたのだろう。


「私は独身。子供もおりません」
「……申し訳ありません」


梓には平身低頭、謝る以外にない。


「あなたが謝ることではないですよ。ともかくそういうことなので、社長をせっつくなり誘惑するなりしてください。私もこの婚期を逃すつもりはありませんので」
「もしかして三島さん、退職されるんですか?」


梓たちの結婚をそこまで焦らせる理由が、ほかに思い当たらない。

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