恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
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『梓を連れていきたいところがある』
そう言って一樹が梓を車で連れ出したのは、その週の日曜日のことだった。
空は高く、一点の曇りもない青空。時折吹く風には、秋の訪れを感じさせる。
一樹の運転する車は街を抜け、緩やかな坂道を上がっていく。
(私、この景色、知ってる……?)
初めて通る道のはずなのに、窓の外を流れる景色に、梓はなぜか既視感を覚えた。
「一樹さん、どこへ向かって」
梓がそこまで言ったとき、目の前に真っ白な建物が姿を現した。
それは梓がよく知っているものだった。『Brilliant wedding』とネーミングされた、一樹デザインの式場だ。
チャペルの隣に披露宴を開ける会場も併設されている。
景色に見覚えがあるのは当然。周りの風景も、デジタルCGに取り込まれていたから。
パソコンの画面上で何度となく見ていたため、初めて通った道なのにそうは思えなかったのだ。