恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
ゆっくりと見ながら、隣のチャペルへ続く通路を一樹に手を引かれて歩いていく。
背の高い格子窓のおかげで、暗くなりがちな場所も光が照らしていた。
アーチ型のドアを抜けると、チャペルに到着する。高い天井まで続く壁のステンドグラスから差し込む明かりが、チャペル全体を優しく包み込む。
波を打つように緩やかな曲線を描く壁面が、やわらかな印象を造り出していた。
場所柄、厳かな空気も流れ、心が引きしまる思いがする。
一樹は、祭壇の前で足を止めた。梓のもう片方の手も取られて両手を繋ぐと、向かい合う格好になる。
「ここで梓に言おうと思っていたことがある」
いつになく真剣な目をした一樹が、優しい笑みを浮かべる。
「……なんでしょうか?」
それはまさか……という思いが駆け抜けた。
一樹の様子と神聖な場所が、梓の鼓動を速くさせる。張り詰めた気持ちが最高潮に達したとき――。
「結婚しよう」