恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

一樹の唇がはっきりと動いた。

(結婚。私が、一樹さんと……)

舞い込んだ大きな幸せが、梓の心を震わせる。
なにも返せずにただその顔を見つめていると、一樹にそっと引き寄せられた。

耳もとでもう一度、「結婚しような」と繰り返す一樹。梓はそこでようやく「はい」と答え、一樹にぎゅっとしがみつく。


「結婚の〝ふり〟じゃないですよね?」
「あたり前だ。正真正銘のプロポーズ」


梓の念入りな確認に一樹が断言する。
これまで感じたことのないほど大きな幸せが、梓の心ばかりか身体まで震わせた。

一樹のデザインした憧れの場所で、大好きな一樹からプロポーズをされる。
幸せすぎるというのは、このことなのかと実感せずにはいられない。

一樹にそっと引き離され、吸い寄せられるように唇が重なった。

偽りから始まったふたりの恋は、この先も果てなく続いていく。


END

< 285 / 301 >

この作品をシェア

pagetop