恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「……おかしいですか?」
なにも言わずに固まる一樹を見て心配になる。
一樹の両親に会うからと張り切って着物を着込んだが、似合わないのならやめた方がいいだろうか。
「一樹さん?」
顔の前にひらひらと手をかざすと、そこで一樹はようやく口を開いた。
「……驚いたな。まさか着物でくるとはね」
あまりにも堅苦しすぎたか。
「やめた方がよければ、すぐに脱いできます」
頭の中であれこれと自前の洋服を思い浮かべる。
(なにかほかにあるかな……)
ところが、踵を返そうとした梓の手を一樹は掴んだ。
「いや、違うんだ」
「では……?」
「あんまり綺麗だから見惚れてた」
ストレートに褒められて、今度は梓が固まる番だった。血流が頬に一気に集まり、恥ずかしさに目が泳ぐ。