恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「そうやって照れる顔もたまらない」
一樹は梓の額にキスをし、「脱がせ甲斐もあるしね」と耳もとでいたずらに囁いた。
梓がドキッとさせられていると、背後から足音が聞こえてくる。
「一樹さん、今日はどうぞよろしくお願いしますね」
多香子と陽子だ。
結婚に向けたふたりへの挨拶は、先週末に済んでいる。
ふたりとも、もちろん大喜びだった。
「はい。責任をもってお預かりいたします」
頼もしい挨拶をした一樹は、梓を連れ立って車に乗り込んだ。
梓が言わなくても、帯が崩れないようにシートを倒してくれる気遣いがうれしい。
このところ秋の長雨状態だった十月の空は、信じられないくらいに真っ青。雨に洗われた清々しい空気が気持ちいい。
一樹は、車が信号待ちで止まるたびに梓にチラチラと視線を投げかける。
「どうかしましたか?」
「どうもこうもないよ。あんまり綺麗だから、見ずにはいられない」