恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「あまりそうされると恥ずかしいのでやめていだけると……」
「それは無理だな。いっそのこと、車を停めてずーっと見ていたいよ」


一樹なら本気でそうしてしまいそうだ。
ストレートな言葉は、いつだって梓の心をくすぐる。


「おばあちゃんに着付けてもらったの?」
「いえ、自分で着ました。中学生の頃に祖母から教わったので」


着物は自分で着られた方がなにかと便利だと祖母に言われ、浴衣の着付けが始まりだった。
これがなかなか楽しく、梓も夢中になって覚えたものだ。


「へぇ、いいね、そういうの。女性らしさがたまらない」
「そうでしょうか」
「着付けができれば、遠慮なく脱がせられるしね」


憎めない笑顔で冗談まじりに言う一樹だが、梓はそれにうまい切り返しができない。ただ頬を赤く染めてオロオロとするばかり。
そんな反応をまたおもしろがる一樹だった。
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